自由の国アメリカ。ドラマや動画でよく見るアメリカの高校生は、随分とカジュアルな服装や髪形をして羨ましいと思う人も多いでしょう。
はたして、実際の学校生活というのは、何でも自由に出来て、生徒にとっては気軽に過ごせるような環境なのでしょうか?
日本からはアメリカの大学へ留学する人が多いですが、中学・高校となるとちょっとイメージが湧かないかもしれません。
そこで、今回は我が息子たちの学校の様子を通して、アメリカの中学・高校の規則って気軽なものなのか、大変な状況なのか紹介したいと思います。
もちろん、地域や私立の学校によって多少の違いもありますが、概ね同じと見ていただいて大丈夫でしょう。
まず、学校の規則やルールについて事細かに書かれてある校則のハンドブックが存在します。
それは、どの学校のウェブサイトにも掲載され、誰にでも見られるように公開されています。何と、我が息子たちの高校のハンドブックは50ページ!
中学はもう少し少ないボリュームで、小学校の話もすると、内容は更に簡単でした。
私も日本の高校を卒業してからしばらく経っていますが、日本の校則はここまで長くないでしょう。
公立の学校では、毎年そのハンドブックの見直しが行われますが、基本的に州からのガイドラインを元に、学区としてのガイドラインが決められます。
よく学区や学校のフェイスブックページの投稿に、「○○の状況なのだけど、そのプロトコルは?」という具合に聞いている人がいます。
これは、「ある状況になった際には、学校(先生・学区の教育委員など)は、どのように対応するよう決まっているの?」と、まるで数学のように問題があったら、必ず値する答えが決まっている、という事なのです。
よって、「曖昧」とか「グレー」という状況に陥りません。
そうなのです。実は、アメリカの学校は、日本の学校より全てにおいて細かく詳細のルールやガイドラインが引かれているのです。
様々な国から移民や移住でアメリカに来ているため、服装や髪形、髪の色などは結構自由にできます。
我が子も4年生の時に一時期髪を青色に変えました(笑)。しかし、言動・行動という事に関しては、厳しく規制されています。
牧場で放牧されていつつも、その柵を超えると厳しい罰則と現実が待っているというイメージでしょうか。
その柵を超えた場合には、ディテンション(Detention)と呼ばれる罰則があります。
簡単に言うと「居残り」や「追加学習」という意味です。
教師が生徒に与える罰則の一種で、朝や昼休みに指定の部屋で自習や宿題をしなくてはならない状況となります。
通常は紙や自分のレコードに記録が残り、ディテンションの自習時間を過ごして、自分のレコードからディテンションが消えるというシステムになっています。
息子達の高校には、土曜日の午前中に自主的に勉強したい生徒が学ぶ、土曜日学校が開いている時期もあります。よって、ディテンションを解消するために土曜日に学校に行く生徒もいます。
学校によっては放課後に生徒を残す場合もあるようです。
アメリカの学園ドラマや映画の中でこのような場面を見た事がありますよね。
ディテンションをもらう理由は様々ですが、多くの場合は理由のない早退、クラスへの遅刻、無断欠席などやるべき事が出来ていない事に対して教科の先生から科せられます。
『アメリカの高校生が受ける学校教育』にも書いた通り、中学・高校では教科毎にクラスを移動して授業を受けるため、クラスへの遅刻というのは起きやすくなっています。
友だちと廊下で会ったのでちょっと立ち話という時間がないほど、生徒たちは時間に追われて生活しています。
日本の学生のように10分休み、20分休み、お昼休みというのはなく、授業間の休み時間(移動時間!)は5分なので、トイレでゆっくりとする時間もありません。
そこにおいて、クラスに入る時はカードIDで管理され、少し遅れると遅刻(ターディー, Tardy)が付き、致命的な遅れとなると「言い訳のできない遅刻」(Unexcused Tardy)と記録に残ります。
この記録は、保護者はサイトで自分の子供の出席状況をチェック出来るので、意味なくターディーがついていると、私はつい子供に状況を聞いてしまいます。
そのおかげて、つかなくて良いマークが時についてしまっている時もあるので、必ず確認するようにしています。
このように、出席に関してはかなりシステム化されているので、私にとっては子供に問題が出ていないか可視化して見えるので有難いですが、生徒からは管理し過ぎるという声も一部あるようです。
ターディーも7回続くと1回ディテンション、「言い訳のできない遅刻」となる場合は、3回もらって1回ディテンションという具合に、子供たちの学校のハンドブックにはしっかりと書かれています。
しかし、そこから授業中に他の生徒や先生を邪魔をするような問題を起こした場合は、その場でディテンションともなり得ます。
その1発ディテンションの中には、他の生徒に差別用語やスゥエアーワードと呼ばれる、アメリカで汚く下品と分類される言葉を使った場合、即刻ディテンション、状況によっては停学など厳しい罰則が科されます。
行動の問題だけでなく、言葉の発言で厳しく罰せられるというのは、日本とはかなり違うかもしれません。この点でもアメリカの規則の方が厳しいというのはわかると思います。
更に問題が大きくなり、校内での喫煙や喧嘩などの問題行動を起こした場合、学校のイベントに参加できなかったり、親と学校側との三者面談に進み、1日~3日の停学処分が下されたりと全てのシナリオはハンドブックに載っています。
我が家の学区は、全米内でもとてもリベラルでさまざまな人種も多く、かつ安全に生活できる街として有名ですが、それでもコロナ前は、子供達も1年のうち2,3回は校内で喧嘩を見た!と言う話はしていました。
実際、高校自体が大きく、4,000人近い生徒が通っているという事もありますがね。
また別の側面ですが、高校にはセキュリティやガード、学校によっては警察が学校の見回りをしたり、金属探知機を通って登校するという学校もあります。
勉強以外の問題は教科を教える先生方の仕事でないというのは、日本とはかなり違う所だと思います。
問題が起こった場合も、日本では授業を教える担任の先生が登場しますが、アメリカにはカウンセラーという先生が専門として一人一人についているので、立場や役職がしっかり区切られています。
私見ですが、学校側は、子供達に高校卒業まで勉強に励んで欲しいという思いがあるので、学校から退学を進めるという状況はどんな問題児でも少ないです。
それでも、義務教育で公立の高校ならば普通に通える所で、高校を卒業せず退学するアメリカ人の生徒が日本より多いのは、厳しい学校の規則に沿って学習できないという生徒がいるという事は事実です。
それにも増して、自分の意志に関わらず、個々人の家庭環境の複雑さによって退学を選ばざるを得ない生徒も多く存在しています。
一見、アメリカの学校システムや規則は気楽なように見えますが、実はしっかりと管理され、生徒が規則を破った際の罰則は、説明してきた通り細かな段階で分類されています。
更に言うと、無断で学校を9回以上欠席した際は、どんな状況にあろうとも留年となります。
日本の中学生や高校生が留年というのは、滅多に聞かない状況ではないでしょうか。
アメリカでは年を重ねる毎に大人な対応を求められます。
ルールをしっかり提示されているので、知らなかったという言い訳は聞きません。
ただし、ルール内であれば大抵の事は問題なく、それが髪形、ヒゲ、服装、車での登校など自由にできているので、外から見ると自由にしている!と見えるのでしょう。
でも逆に、自由の中で厳しいルールが存在するため、そのルールから外れた場合は、戻るのは難しい社会であると思います。
日本は厳しい面がありつつも、人々のふり幅が狭く、「普通」とか「中流」というのが大半以上占めているため、そのルールから外れる人が少ないのかもしれません。