コロナ時に新学期リモート授業開始(2)
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コロナ時に新学期リモート授業開始(2)

前回、子供たちの学校がフレキシブルに対応しようとしている姿勢を説明しました。もう一つ私が驚いた、コロナ禍でのアメリカの学校の取り組み方とは、子供たちの心のケアへのサポートについてです。ご存知の方も多いでしょうが、アメリカでは、基本的に子供たちに対するセラピーや精神科医との面談を積極的に薦めています。多民族から成るアメリカという国では、日本の単一民族とは違い、人種や肌の色の違いはもとより、宗教や家庭環境が千差万別です。親の離婚率も日本より高いと言われており、シングルマザーで育つ子供や虐待の被害者児童、更にはホームレス児童や他国からの避難民なども普通に周りにいます。このような環境下の子供たちが、全て心や行動に問題があるかというと決してそうでないですが、子供の育成には何かしらの影響は出てくるというのは言えると思います。 

また、長男の友だちの話ですが、一見幸せそうで裕福な家庭の子供でも、実は、もうすぐ親たちは別居するという話もあったりと、自分の勉強や将来への不安以外にも子供たちは様々な問題を抱えていると思います。そんな中で、思春期という微妙な状況の苦痛を少しでも緩和させるため、ソーシャルワーカーとのセラピーや精神科医への面談という事への隔たりは、アメリカでは全くありません。必ず学校や街のWebサイトには相談の連絡先が表示されていますし、学校にもカウンセラーが数名おり、万全の状況が整えられています。逆にこちらとしては、少しスムーズ過ぎないか?と思う事さえあります。 

そんな事で、今回のコロナ禍という状況でも、もちろん子供たちへのサポート情報が至るところに発見されました。前回のブログで、学校側から保護者に送られたアンケートの中にも、数項目に渡って、子供たちの心の状況が聞かれる設問がありました。凄い所は、その設問に対して少しでもネガティブな状況を報告すると、学校から連絡が来て、「何か出来る事はないか?」、「どんなサポートが必要か?」とメールで連絡が来た事です。「長男が少しイライラが増してきたように感じる。」と返信したところ、学校側から主治医に連絡することを進められました。一応その通りに進め、病院からは「親子で面談を希望するか?」と聞かれました。面談の予約はしたのですが、処方する薬の詳細の話と後から聞き、また長男も学校が始まってすっきりしたらしく、その面談はキャンセルしました。薬を処方することへの障害も、全く感じられませんでした。 

また、次男がリモートでの体育の授業中に受けたアンケートで、少し気持ちが落ち込みやすいと記載した際には、先生からすぐ親子ともにメールが入り、先生の方でもサポートできる事はするし、「○○の時間に連絡をください」という具合に、真剣に子供たちの心のケアに対して取り組みをしていると感じました。こちらも逆に心配になり次男に聞いてみると、「大した事ないよ!正直にアンケートに答えただけだけど、何もいらない。」という話だったので、取り合えずは先生に感謝のメールを返信しました。 

このような体制が整っている状況というのは、単に多種多様な環境下の子供たちがいるという事だけでなく、サポートを提供できる環境が出来ているという事だと思います。というのも、アメリカでは精神科医や心理学者のみでなく、カウンセラーやソーシャルワーカーがたくさんいる、という現状です。だからそこに対するアクセスも簡単なんでしょうね。 

しかし、良いことばかりでなく、一時期アメリカでは子供に処方する薬の増加という事も問題視されていました。薬が必要でない子どもや症状に対しても、簡単に精神安定剤が処方されてしまうという事です。10年程前に話題になったことなので、今では少なからず薬への処方に慎重になっているとは思いますが、それでもそこにたどり着くまでは、日本よりかなり簡単だと思います。 

少し前の話ですが、私が日本でアマゾンジャパンの立ち上げに入っていた2000年、シアトルの本社から何名かのサポートメンバーが日本に来ていました。私はプロダクションチーム所属だったので、Webデベロッパーやエンジニアと共に仕事をしていました。その中でよく仕事で関わっていた一人が他のシアトルからのマーケターと会話をしている所に加わりました。彼らは「いつからプロザック飲んでる?僕は大学の2年から」と淡々と会話していました。私は「ん?プロザック?」と聞いたのですが、「あーDepression(うつ病)の代表的な薬だよ。」と普通に何のためらいもなく答えてくれました。聞いてみると、特にシアトルは秋から春先まで雨が多く、気候の影響で季節的なうつ病になる人が多いらしいです。そういえば、昔何かの記事でシアトルは全米一自殺率が高い街というのを聞いたことがありました。そういう状況もあって、シアトルの若者たちがうつ病の薬を処方されるというのは、かなり普通の事らしいです。私にはショックでしたがね。 

話を戻しますが、子供たちの学校から、更にはコミュニティからのケアの充実に関しては、やはり親としては有難いものがあります。いくらすぐに必要としなくても、どこに連絡をすれば良いか、また簡単なチェックや面談なら学校でも行え、それが変わった事でなく正しい処置の方法と周りに認識があることは、子供たち自身にも安全網となっていると思います。日本では、今でもカウンセラーに相談することや、簡単に薬の処方などについて質問出来る窓口が少ないと思います。あるいは、その選択をすることに対し、未だに変わった見方をする社会構造のままだかと感じます。必要の有無にかかわらず、子供たちや保護者が気軽に子供たちの心のケアについて相談できるシステムが、社会全体に行き渡るようになると、日本ももう少し住みやすくなるのではないかと思いました。 

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