子供の日本語の習得について
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子供の日本語の習得について

仕事であれ、自己都合であれ、アメリカに移住となった場合、自分やパートナーの生活だけでも山ほど考えなくてはならない事があります。それが子供と共にアメリカへ引っ越しとなった場合、親としての責任は更に大きくなります。その一つとして挙げられるのが、子供の日本語教育。赴任となった場合は、もちろん帰国後に子供が日本語レベルを維持できるよう努力しますし、永住を決断したとしても、子供が日本語を使えるように親が望むのは大多数であるでしょう。今回は、アメリカでの日本語教育方法について語ります。 

さて、日本語ネイティブの方はあまり気にしていないと思いますが、日本語は中国語、アラビア語に続く世界で三番目に習得が難しい言語とされています。ひらがな、カタカナ、漢字と複数の文字表記を使い、特に英語ネイティブに難易度が高いと言われています。もちろん、日本に住んで日本語を聞き、話す機会があれば、子供は普通に日本語を使います。しかし、異国であるアメリカで、親以外日本人がいない環境で育つようなら、教育方法を考えない限り、子供の日本語習得はあり得ません。 

では、短期であれ長期であれ、アメリカに来ている日本人の子供たちの日本語教育には、いったいどのような選択肢があるのでしょうか?それぞれの長所・短所も並べてみました。 

  • 日本人学校(日本語全日校)
  • 日本語補習校
  • 塾・家庭教師
  • 通信養育
  • 無料プリント

【日本人学校(日本語全日校)】

アメリカの現地校に通わず、月曜日から金曜日まで、全て日本語で授業が行われる日本人学校です。アメリカには、現在4州(カリフォルニア州、イリノイ州、ニュージャージー州、ニューヨーク州)とグアムの計5校が存在します。文部科学省の認定を受け、教師は日本から派遣される教員資格を持っている方となるので、アメリカに居ながらそのまま日本語の学校に行っているのと同じ事になります。また、日本の税金を使って運営されているので、費用も比較的安いのではないでしょうか(未確認です)。短い期間の滞在、あるいは数年であろうが、英語より日本語の習得に力を入れたいという意見をお持ちなら、間違いなくこの選択でしょう。ただし、学校の数自体が少ないので、毎日通える範囲の距離に住んでいる人のみ限定という選択肢になります。 


<長所>問題なく日本語が習得できる。 

<短所>学校の数が少なく、毎日通える人限定。バイリンガルとしての英語の習得は諦める。 

【日本語補習校】 

主に土曜日、あるいは日曜日や現地校の放課後時間を使って、日本語の教育を行う『日本語補習校』。日本で使っている教科書を使い、日本の学校の教育内容を学びます。何と、アメリカ全土で61校も存在します。もちろん、補習校の規模によってクラスサイズや内容の違いが大きく変わるのですが、大都市の補習校は数百人を超える生徒を抱えています。(ちなみに、シカゴの補習校は、コロナ前には幼稚舎から高校生まで750人以上生徒がいました!)限られた時間のため、算数(数学)や国語がメインですが、社会科も年齢によって授業に入ってきます。 

土曜日の補習校の場合、その1日を朝から夕方まで費やすので、結構のボリュームです。子供たちにはどっさりと宿題も出され、親のサポートは必須です。また、赴任者のお子さんと、アメリカ生まれのお子さんとの学力の差が年を追う毎に開いてくるので、クラス分けが出来る環境であれば良いですが、そうでないと先生方の授業の仕方も難しいようです。私の子供たち3人とも補習校生なのですが、先生方は、現地で普通の仕事をされながら、週末に先生として教壇に立つ方がほとんど。なので、色々な先生方がいますが、もう尊敬しかありません。 

補習校については、たくさん書ける事があるのでもう少し書きますね。赴任者のお子さんはもちろん、国際結婚をされた方、日本人同士の親御さんでアメリカ生まれのお子さんと、様々な状況の子供達が補習校に通っています。費用は、日本の受験塾に通わせていると考えるとかなり安いと思いますが、年間を通すとそれなりな額です。アメリカに居る期間が数年のお子さんは問題なく授業についていけますが、アメリカでの滞在期間が長い場合、やはり親も含めて大変です。「いつか日本に帰る」という選択肢がない場合もあるので、大変ならば勉強したくないでしょうし、やる気も出てきません。

また、小学校の高学年や中学生からは、スポーツクラブに入っている子は授業の参加が更に難しくなり、親御さんも送迎が大変です。それでも1時間、1時間半かけて通われる家庭もあるので、どうしても日本語を習得して欲しい!という家族の強い意志と宿題のサポートが出来ないと、長く続けるのは難しいです。 


<長所>現地校に通いながら日本語の勉強ができる。日本人と一緒に時間を過ごせる。親同士で情報交換ができる。 

<短所>子供の年齢が上がってくると、宿題や課外活動との両立が難しい。子供のモチベーションを上げるのに親が苦労する場合がある。 

【塾・家庭教師】

日本人が多く住んでいる地域(日系の会社が多い街)や大都市には、日本に戻っても支障がないように、また受験が出来るような高いレベルの塾があります。見ている限りでは、日本の生徒よりレベルが落ちないために通うというより、帰国時の際、中学、高校の受験をするため、また大学受験の準備のために通うという方がほとんどです。私の地域にも数校塾があるのですが、通っているのは、やはり赴任組のお子さん、あるいは日本の大学を受けるお子さんのみです。費用を考えたり、通うための送迎の手間を考えると、日本語を覚えて欲しいという目的より、受験のために勉強して欲しいという希望で塾を利用されています。 

家庭教師も地域によってはあるのですが、最近はリモートで授業を受けるシステムがかなり充実しています。ロケーションの問題もなくなりますし、教師はアメリカに住んでいる日本人、あるいは日本にいる日本人という場合もあります。費用はやはり高額ですが、受験対策で、数学が出来ない、国語の小論文ができない、と的を絞った使い方をしている方も結構います。 


<長所>受験などの目的や子供の苦手分野に特化して授業を受けられる。リモートでも受けられるシステムが増えている。 

<短所>高額費用。 

ー参考ー
★ EDUBAL

ベストゼミナール

【通信教育】 

日本にいても通信教育を受けているお子さんは多い事でしょう。提出期限はあるものの、いつでも勉強できる手軽さと、塾ほど出費がかからないというのが魅力です。私の子供たちも「しまじろう」に始まる「こどもちゃれんじ」をアメリカに来るまで利用していました。その当時、紙面のテキストのみでなく、タブレット式のデバイスに移行していた時期で、子供たちも意欲的に取り組んでいました。アメリカでは利用していないのですが、『こどもちゃれんじ・進研ゼミ海外受講』は海外居住者にサービスを提供しています。ただし、デバイスでの受講は不可能なので、郵送で受講課題が送られ、テストについては日本に郵送で送るというシステムです。ですので、送付から返信を受けるまで時間がかかります。他にも『Z会海外受講』『サピックスUSA』『海外子女教育振興財団』などあります。やはり自主的に勉強できる環境=親のサポートが少なからず必要になります。本人にやる気がないと、毎週通う補習校以上に継続するのが難しいと思い、我が家では利用していません。それでも赴任家族の方々で、補習校だけでは足りないと思う家庭には、とても良いサポート教材だと思います。 


<長所>比較的に手頃な費用。手軽に家で勉強ができる。 

<短所>親のサポートが必須。 

【ちびむすドリル(無料プリント)】 

100%親が指導のプリント式ドリル。『ちびむすドリル』のサイトから無料で教材をダウンロードできます。ただし、プリントアウトする仕様なので、勉強するボリュームが多い場合は、紙代、印刷代と費用が出てきます。それでも無料でこれだけの教材となると、ちびむす以外は無いのではないでしょうか。幼児用から中学生までと揃っており、漢字書き取りなどは高校生分もあるので、とても便利なツールです。我が家も子供が苦手な単元のみ復習用として利用しました。費用の問題、ロケーションの問題と考える必要がないので、他の方法と上手く組み合わせて使っても良い方法だと思います。 


<長所>自宅でいつでも勉強ができる。教材は無料! 

<短所>親のサポート必須。範囲を広くカバーするとなると、紙や印刷費用が自宅でかさむ。

日本人にとってアメリカの良い所の一つは、日本語教育が他国より充実している所です。赴任家族の方のみでなく、日系アメリカ人や国際結婚をしてアメリカに移住した長期居住者にも、子供達の日本語勉強へのアクセスは備わっています。問題なのは、子供本人のやる気の維持と、親のサポート。ツールはあるので、それをどう上手く活用するかは、親の全面的な協力になってしまうのです。身近なお友だちでも、子供には補習校を小学校、あるいは中学校卒業まで行かせたい!という家庭がほとんどですが、本当に大変です!!大変だからこそ、自分のお子さん、自分達の家族の状況に合わせて、何が一番ベストかを考えて日本語習得を実践すると、ストレスも軽減されると思います。そうです、アメリカに住んでる子供にとって日本語の勉強はストレスなのです!もちろん親にとっても!!それを忘れずに。 

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