アメリカの高校生のスポーツ事情(2020年のコロナ禍)
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アメリカの高校生のスポーツ事情(2020年のコロナ禍)

アメリカ学生のスポーツ事情は日本と違う?

秋と言えば関連する枕詞が色々と思い浮かびますが、今回はスポーツの秋。アメリカでは日本とは違い、季節ごとにスポーツが分かれています。


私も最初に日本から移住した際は、その理解が良くできませんでした。しかし、その言葉の通り、春、夏、秋、冬によって開催されるスポーツが決まっているという事です。


日本では、冬の野外スポーツを除いて、大抵の種目は一年中練習や大会が開催されますが、アメリカでは、特に子供たちが小さい時は、一つのスポーツを通年行うという概念がないのです。結構驚きですよね。


でも、よく野球のプロスポーツ選手が、大学生の頃はアメフトやバスケも一流であった、という話が聞かれたりします。身体能力の高い選手は、シーズン毎にスポーツを変えて活躍できる環境が、アメリカにはあるという事ですね。


逆に言うと、一つのスポーツに特化してしまうと、同じ筋肉を使い過ぎて故障しやすくなるため、体の成長のためにもシーズンオフには他のスポーツを経験するべき、という考え方もあります。


日本の高校球児が甲子園出場時に身体を壊すほど投げ続けるという現象は、アメリカ人にとってはやはり信じられない事だと思います。 

さて、今年のコロナ禍という緊急事態により、日本の夏の風物詩である甲子園大会が中止となりました。


我が家の子供たちは野球少年なので、アメリカからでも毎年注目選手や応援している学校の勝敗に一喜一憂していたので、状況の深刻化を理解していても残念に感じていました。


こちらアメリカの高校のスポーツ事情も同じように異常事態となっています。練習から始まり、公式大会には厳しい制限が設けられています。


大会や高校のスポーツに関しては、実は州ごとに規定が違います。イリノイ州の場合は、IHSAという団体が、イリノイ州知事が発令している制限に従い、高校の課外活動として行うスポーツのルールを決めています。


6月いっぱいは練習さえもままならない状況でしたが、7月からは屋外のスポーツや練習が少しずつ再開されていきました。


野球は密集度も少なく、野外のスポーツという事もあり、夏休みの間に対外試合を行う事ができましたが、夏以降にIHSAから出された新年度のガイドラインは、大きな違いとして、全てのスポーツの開催シーズンがずれる、という内容でした。


野球でいうと、公式シーズンは春で、トライアウトは2月の終わりから3月の始め。それ以前の時期は、高校のコーチは選手に対してスポーツの指示をしてはいけないルールとなっていました。 

しかし、このコロナ禍により、2020-2021年は野球は春から夏のスポーツに変わりました。という事で、トレーニングやトライアウトも5月まで出来ない事になっています。


ここで問題が色々と出てきます。また別の機会に書きますが、高校生の野球活動には学校外にシーズンに関わらないトラベルチームが存在し、シーズン以外の時期にも野球一筋の子は練習や試合を行います。


我が次男も野球のトラベルチームに入っているのですが、このトラベルチームは通常時のスケジュールに沿っているので、高校野球が始まらない時期に野球をし、高校のシーズン時には大会が練習が重ならないように組み立てられています。


なので、通常通り2月末まで練習をし、夏のシーズンでまた再開するため、この3月から5月という間が空白期間となってしまうのです。


このような話は野球以外でも問題となっており、特に親たちはこの時期にどう子供たちの技術を高めればいいのか?と不安視しています。

なぜ親までも不安を感じるのか?というのが、日米の高校スポーツの在り方の違いから成っていると思います。


アメリカでは、高校のスポーツの成績や実績を元に大学入学の窓が大きく開かれ、多額の奨学金を獲得して有名大学に入るという事が可能です。


日本でももちろんスポーツ枠やスポーツ選手の奨学金という設定はあります。ちなみにですが、私の兄もスポーツ枠で都内有名大学に入学しました。


メジャーなスポーツでなかったという事もありますが、推薦枠獲得までは、全く複雑なシステムでなかったようなことを母は話していました。 

しかし、アメリカのスポーツ入学、あるいは奨学金獲得のシステムは、日本人の想像を超えています!その奨学金やスカウトの規模がデカいのです。


スポーツの種類によっても違いますが、個人技やバスケ、アメフトなどメジャーなスポーツは、フレッシュマン(高校1年生)の時からスカウトの声がかかります。


一流となると、ソフモア(高校2年生)で進学する大学が決定する事もあります。”コミットメント”という言葉を使って、「僕は〇〇大学にコミットしました!」と自分のソーシャルメディアのメアカウントからも公表し、まだ数年ある高校生活中であってもその大学への進学と忠誠を誓う姿勢が見られます。


私の息子たちが通っている高校でも、優秀な選手はジュニア(高校3年生、アメリカではシニアの4年生が最終学年)から10校近くの大学からすでにオファーをもらい、コミットまでしています。


このような選手たちは、一昔前なら勉強の成績もあまり重要視されていなかったのですが、最近はそうもいかず、逆に言うと成績優秀であればある程、オファーの大学数や学校の質がぐん!と上がります。


なので、生徒本人たちも自分のツイッターやインスタグラムのアカウントを使って、自分の活躍している動画を流し、GPAと呼ばれる、成績評価指数の値も堂々と出して自分をセールスしています。

また、奨学金というのはスポーツの超一流高校生のみが与えられるというものではなく、トライアウトで良い成績を出した選手、コンスタントにそれなりの成績を出している選手など、幅広くチャンスがあるので、高校でのスポーツ活動は大学入学を考えた場合、とても有利に働き、親としてもどうにか頑張ってくれ!という思いでいるのです。

良い成績を残すために親や家族を巻き込んで一年中励んでいるのです。


その大きな理由として、アメリカの大学は費用が高い!というのがあるからです。


政府からの学生ローンも大多数の学生が申請しますが、それでもアメリカの大学は日本の3倍から5倍はするのです!本当に親泣かせですよ。。。なので、更に真剣になるのです。 

このような中でのコロナ禍。先ほども書きましたが、州によって規制は違うのですが、イリノイ州は2020-2021年のスポーツに制限を設けています。


ゴルフやトラック競技は進められていますが、大人気のアメフトやサッカーには厳しい規制がかかっており、公式試合が出来ない状態です。


そこで、大学からの奨学金やスカウトが受けられないとし、何と多くの学生と保護者はイリノイ州のスポーツ団体IHSAを相手取り、この度裁判を行いました。


規制内でも安全に気を付けてスポーツ競技は開催できるはず!何より子供たちの将来へのチャンスがなくなってしまう!という事です。


日本で言うところの、甲子園大会を開催させろ!高校サッカー大会を開催させろ!と野球連盟やサッカー連盟を訴えたという具合ですね。


先日判決が下ったのですが、勝者はIHSA。州知事の指示に従っているので、公式試合の中止は違法でなく正しい判断、という内容でした。

以外にもあっさり決定したのですが、判決の基準としては、IHSAが独自の判断という事でなく、州知事の判断に従っているため違法でないというシンプルな結論でした。


感情論を持ち出すと、とても複雑な内容の審議ではあったと思いますが、何よりIHSAは正しい判断をしているかどうかが判断基準でしたので、世論でもそこに異論は出ていませんでした。


しかし、保護者や高校生たちからしたら、州知事の規制の範囲内でも、IHSAは開催を可能にすることも出来たはず、という気持ちでしょう。


正直、組織がスポーツ毎に細かいガイドラインを決め直し、どうにか再開させようと努力しているようには見られませんでした。


責任を取りたくないというのはあったと思います。将来性のある素晴らしい選手はすでにコミットしている状態かもしれませんが、その次のレベルの高校生や親たちは、本当に悔しい気持ちでいると思います。


何せ、上手く成績が残せていれば、年間数百万円の奨学金、あるいは有名大学からのお誘いも不可能ではなかったからです。


皆さんも大きく影響を受けているコロナですが、健康面だけでなく、子供たちの将来に繋がる可能性への妨げにもなっているとは、何とも心苦しいまでです。


ただ言える事は、どうにか踏んばり、無理をせず、この時期を乗り越えていけるよう皆で協力していきたいですね。