アメリカの子供の習い事事情
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アメリカの子供の習い事事情

子供が生まれると、親としては「どんな習い事をさせようか?」というのが頭に浮かびます。子供が大きくなってから、本人がやりたい事をやらせるという考え方もありますが、多くの親はそれにプラスして子供本人の意思に関係なく、良いと思う事は習わせたいと思っているでしょう。日本では、水泳や英会話に始まり、音楽教室、サッカー、そろばん、習字、武道、バレエ、絵画教室など、スポーツから文科系までさまざまな選択肢があります。住んでいる地域によって多少違いもあるでしょうが、それ程遠出をしなくても、定番の習い事は問題なく見つけられます。少子化という事もありますが、それだけに子供への習い事に対する親の関心度はかなり高いでしょう。 

もちろんアメリカも同様に、子供への習い事に対する親の関心は大きいのですが、日本とは状況が少々異なります。それには、以下のアメリカ特有な理由が挙げられます。 

  • 送迎の問題
  • 費用の問題
  • 地域的な問題

【送迎の問題】 

まずは車社会のアメリカでは、親が子供の習い事のために車で送迎をするのは、当たり前の実情です。ニューヨークや私の住んでいる近郊のシカゴなど、公共の電車やバスが比較的発展している都市部でも、習い事の場所は交通の便が良いような場所にありません。必ずと言っていいほど車の送迎が必要です。それも、家から10分程度で行けるような場合はラッキーな方で、下手すると片道20分から30分かかりる場合もあります。また、学校は通常午後3時から3時半頃に終わるのですが、早い所では4時や4時半から習い事の時間となります。そうすると、両親共働きで、家に帰るのが5時過ぎとなると、すでに習い事の選択肢が制限されます。年齢が上がると開始時間も遅くなるのですが、小さいうちは習い事は早く始まるので、この送迎問題を解決するのは簡単なものではありません。そこで、アメリカでは習い事の送迎のためだけにベビーシッターを依頼したり、同じ習い事をする近所や知り合い家族に送迎を頼んだり、順番持ちをしたりと、送迎の件は実際の習い事以外にも考えなくてはならない問題となっています。 

【費用の問題】 

アメリカで子供の習い事にかかる費用は、日本と比べて格段に高いです。日本に居た際は、東京に住んでいたという事もありますが、子供たちは野球、空手、水泳、そろばん、通信教育と色々取り組んでいました。多い方かと思いますが、それでも各習い事は兄弟割引があったり、値段の割に得られるものからの費用対効果はかなり良かったです。ところが、アメリカに移ってから子供の習い事を調べてみると、費用は日本の1.5倍、時には2倍以上掛かり、かなり驚きました。 

また、『アメリカの高校生のスポーツ事情(コロナ禍)』でも少し言及しましたが、スポーツを突き詰めると、「トラベルチーム」に参加するという一つ上の段階があり、子供ながらにトライアウトを受け、受かった子供だけが参加できるという少数精鋭で、本格的に技術を上げていくというレベルもあります。「トラベル」と名がついているのは、多くの場合、試合ごとに遠出して厳しいトーナメント戦に参加したり、強豪チームと試合をするので、時には州をまたいで試合に行きます。よって、他の習い事よりも参加費用も大幅に上がります。年齢によっても違いますが、トラベルチームに参加するだけで数十万円の費用が発生します。試合の移動費用やホテル代も別途必要になるので、最終的にはかなり高額な投資となります。 

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更には、日本と違い、アメリカのスポーツ競技には開催するシーズンが決まっているので、年間費用といっても、1年中練習や試合をしているわけではありません。我が家の子供たちは野球のトラベルチームに参加していますが、中学生までは夏か秋の1か月から2か月間の参加。高校生になってからのトラベルチームでは、冬から春にかけてトレーニングをし、夏にトーナメントに参加するが練習は基本的にないという状態です。トレーニング場も家から30分ほどかかります。ですので、子供も親も本気で取り組まないと、やっていけないようなレベルです。 

学習塾などは日本でも費用が高い方ですが、アメリカで学業の向上のための習い事と言ったら、チューターと呼ばれる家庭教師になります。そうすると、一人の講師に対しての時給が発生するので、日本と同じように高額になります。よって、チューターを活用する人は、高校生から追いつけない授業に対してという方法や、大学受験のためのテスト対策のためチューターを雇う場合がほとんどです。時給も科目やパッケージのコースにもよりますが、見た限りでは1時間で$50~$70と日本より高いでしょう。 

日本のように通信教育は浸透しておらず、十数人で受ける学習塾も滅多にありません。小学生に対しては、日本の公文(KUMON)がアメリカに参入してきていますが、都市部にしかないようです。ですので、小学生で日本で言うところの学習塾に通っている人は皆無です。ただし、 Science、technology、engineering、mathematics の頭文字をとった STEM と呼ばれるエンジニアや理系の学習となると、大学が小学生や中学生向けにコースを作っていたり、夏期講習として出していたりするので、費用まではわからないのですが、アメリカでは上に上がりたい人には、費用はかかるけど道はあるという状況です。 

【地域的な問題】

 アメリカには、当然のことながら広大な土地があります。そんなこともあって、東部、西部、中西部、南部によって出来る習い事が限られる場合があります。アイスホッケーなどは、やはり中西部や東部で盛んですが、南部ではそのような事はありません。シカゴ周辺も中西部なので、男の子はアイスホッケー、女の子はフィギュアスケートを習う子供が多いです。スケートリンクも街の公民館に素晴らしいリンクがあるので、夏でもクラスのスケジュールがたくさんあります。また、先ほどの公文の話と重なりますが、都市部では習い事の選択肢は多くありますが、郊外や田舎の方となると、遠い所から子供の習い事のために通うか、選択肢のある範囲から習い事を決めるということになります。野球やフットボール、サッカーなど野外スポーツになると、季節が決まっているものの、冬が厳しくない南部や雪の降らないエリアでは、1年を通して外で練習や地域的なトーナメントを開催することも可能です。しかし、北西部や東部では、バスケットボールや水泳など、他の冬のスポーツを選びます。 

このように、アメリカの子供の習い事は、日本での捉え方と少々異なります。親や子供が興味あるものを簡単に習わせられるという状況には限りがあり、習い事を始めると決めても、費用や移動、立地的な問題も大きく関わってくると、何かを始める際は、親子共に何かしらの覚悟が必要となります。日本のように気軽にさまざまな習い事を試せる環境は、とても恵まれていると思います。アメリカでも手頃な価格で移動に関する問題がないような状況になえば、子供がいる中流階級の家庭に優しい国になれるのに、と考えてしまいます。 

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